オーガナイザー・担当者:顏世鉉
本所の創立初期には、漢字研究グループが設立されましたが、翌年の改組により、漢字グループと漢語グループが合併し、第2グループ(組)となりました。しかし、第2グループの専門分野は言語学で、著名な甲骨学研究者である 董作賓氏が考古学グループに所属していたため、本所には文字学に関する専門研究グループが⻑期間存在しませんでした。1958年になって、「甲骨文字研究室」が成立し、甲骨文字研究の専門機関となりましたが、参加した研究者達の専門分野は甲骨に限らず、研究範囲は周代金文や秦漢文字にまで広がるものでした。そして、1990年に、「甲骨文字研究室」は「文字学グループ」 に改名されました。
当学門での初期段階での主要作業は、甲骨文字とその関連研究であり、また、当該分野では最高峰ともいえる研究センターとなったため、甲骨文字研究は本所の最も特徴的な学術研究の一つとなっています。出版された研究成果には、『殷虚文字甲編』、『殷虚文字乙編』、『乙編補遺』などがあり、 甲骨をつなぎ合わせて再現した成果として、『殷虚文字丙編』上・中・下三輯、考訂・解釈に関する出版品として、『殷虚文字甲編考解釈』と『甲骨文字集釈』が挙げられます。その他に、『金文詁林補』は、主要著者である周法高氏は当グループのメンバーではありませんでしたが、学術上の業績は当学門に属します。
この20数年の間における、当学門の甲骨整理および出版成果には、『甲骨綴合集』(1999)とその『續集』(2004)、『史語所購蔵甲骨集』(2009) 、『殷墟文字丙編研究』(2010) 、『殷虚文字丙編摹釈新編』(2017)が含まれ、甲骨文字の字形に関する専門著作として、『甲骨文字編』(2012)が挙げられます。さらに、2013年からは国立歴史博物館と協力し、博物館に収蔵された甲骨の整理・研究・出版作業に従事しています。⻘銅器遺物の整理に関する出版物には、『新收殷周⻘銅器銘文暨器影彙編』(2006)、『寶雞戴家灣與石鼓山出土商周⻘銅器』(2015)などの書籍があります。また、本所が所蔵する『居延漢簡』の整理・出版作業には、当学門研究者も参加し、特に断片的に残った漢簡の組合わせ作業にも、数多くの成果を出しました。それ以外にも、本学門 の研究者達は、古文字学データベースの設置に関し、努力を続けています。 例えば、殷周金文と⻘銅器のデータベース、先秦の銅器に刻まれた紋飾の データベース、先秦の甲骨金文簡牘文字の語彙データベースなどが挙げられます。これらの成果は、学術界に対し利便性のあるツールを提供するにとどまらず、出土文物や文字・歴史研究に対して、新たな影響を与えています。
古文字に関する資料は、毎年新しい発見と出版品が登場しますが、その内容は、新たに出土した甲骨、金文、簡帛などの遺物に主に集中しています。現在、当学門の研究上の重点は、新しく出土した先秦と秦漢の簡帛に書かれた 資料です。解読・解釈などの基本的な作業の上に、既存の古典籍の校読、古代漢語、古文字、数術学、秦漢社会など、各方面における研究や討論を展開しています。2006年に当学門が主催した「第一回古文字及び古代史学シンポ ジウム」をきっかけに、「古文字」と「古代史」の研究の伝統を結合させた具体的な成果として、『古文字と古代史』という論文集が出版されました。現在までに5回に渡るシンポジウムが開催され、5編の論文集が出版されてい ます。その成果により、古文字史料を使用した古代史の研究を進めていく潮流が醸成され、今後も古代史上の発見が促進されていくことでしょう。